裏表

小説の執筆状況報告用。またある時は私こと北雪しこの小説練習帳。

余り面識の無い5歳以上年下の奴から私の持ってるある程度大切な物貸してって頼まれたんだけど。
そbのメールの文面が
「○○貸してくれません? お礼ははずみますよ」
って文面だった。

お前は殿様か!
そして俺は太鼓持ちか!


「ぐへへへへ、これこれカゴ屋、道を急いでくれんかのう? 礼は弾むでの」
「ヘイ! 了解しました旦那!」


て感じだよね普通。
なんでそんなに偉そうなんだって思ったよホント。


メールガン無視しちゃった。てへ☆
  1. 2009/11/07(土) 10:36:41|
  2. 日記
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コンセプトについて

話を書くときにコンセプトってありますよね。
例えば私の場合男前奈友人ではネタてんこ盛りのコメディ小説的な感じで。
俺が妻に思うことでは日記形式のモノでトリビア的に知識を散りばめていく日常恋愛小説。
恋愛小説って実は読んだ事ないんです。大嫌いですし。
でも自分が書くのはそんなのばっかり。

以外にもそう言うことって良くありますよね。
好きなものは別にあるのに作るのは別の物って。

ちなみにその内推理パート(或いは新規の推理小説)も考えているのですけど、「黒死館殺人事件」みたいな衒学小説風に、でも衒学に堕する事ないような注意をしています。

うまく行ってるかは自信はありませんけど。


コンセプトって大切ですよね。
日常生活でも、行動を起こす時には物事のコンセプトをハッキリさせていたいものですね。
  1. 2009/11/07(土) 08:58:47|
  2. 小説関係
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何て言うか

ネタやアイディアは沢山あるんだけど、それを文章にする力と時間が無い。
私程度の文章書きでもスランプってあるんですね。なんか偉そう。
でも事実、満足行く形にはできないでいる。

どくたーすらんぷキタユキちゃん


ハァ。酷いザマですね。キャンプ座間みろ。
さいてー


どうしよっかなー。

文章書けない。ネタはあるのに。ほんと力の無さを感じる。
推理小説のネタの下書きとかもあるんだけど文章力が無さ過ぎて書けないでいるわけです。
もうやになっちゃう。
  1. 2009/10/30(金) 05:19:35|
  2. 日記
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ワインは

ワインは神の血だって言うよね。キリスト教じゃさー

だからきのう安いワインをがぶ飲みした私は神よりえらいことになるのかな。
ならないね。うん。

でも神の血をってったて血を飲む気にはならないよね。蚊じゃあるまいし。
向こうの人は何考えてるんだか
  1. 2009/10/26(月) 16:22:46|
  2. 小説関係
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チラシの裏的使用法

昔、書いていた小説をここにおいておく。
アルカディアのチラシの裏にアップすると怒られるしね。
ここだったら怒られないでしょ、多分。

フハハハハハ、ムカつくコメントした奴には管理者様であるこの俺が削除してやる!
しないけど。


とにかく、昔書いた小説をアップします。今見ると拙くてもうって感じだけどさ。
正直、むずむずするわ。筈歌詞ーもとい恥ずかしい!

あと、続きを書くのも絶望的だしぃ。



地名は昔住んでたところから少しはなれた、でもそんなには遠くない名古屋市の星ヶ丘の辺りをモデルにしてます。
最近いくことも無いからどうなってるかは解からないのですが当時これ書く時には少しだけ調べた。
でも時間たってるし違ってたら御免ね。
ちなみに地名はもじって少しだけ変えてあるのだ!

あと、気が向いたらここは削除しマッスル。















 空を見上げて、ふと思うことがある。
 
 私たちは何処から来たのだろうかと。
 空に浮かぶ球体の月。それは一つの星。
 肉眼で知覚できる星は、自分の住む、自分の感じるこの世界も、一つの星である事を思い起こさせる。


 俺たちが今、ここに居るこの「俺」である理由は、実は、凄い偶然の上で成り立った奇跡であるという事を。

 この星に居るから、俺は今この俺で居る。人として生まれる環境が違えば、全く違う俺であったのだろう。
 例えば星の重力、空気の組成。気候。そして水の有無。
 まあ、そう言うこと。


 そうして、今夜も天体望遠鏡で夜空の星を見ながら思う。
 この視界にある無限の距離。その輝きの中に、自分たちみたいな生き物が、望遠鏡の先にこっちを見ていたりしたら、それはどんなに素敵な事だろうと。
 そしたら、人類は、孤独じゃなくて、宇宙はなんて賑やかで、素晴らしい世界なんだろうと。

 そんな考えを持ってから、ふと自嘲する。当たり前に解かってしまうから。
 そう、仮に宇宙が生物で溢れていたとしても、そんなものが関係ないほどに宇宙は広大で、光の速さで進んでも命が途切れるまでの時間で「ソコ」にたどり着くのは不可能だという事が、ある程度の知識があればわかる。
 だから、他の星に行くなんて、まさに夢物語。でも、夢は、いつか叶えられるべき物。

 ならば、いつの日かそれが叶う日が来るのかもしれない。
 でもまあ、俺が生きている間に、と言うのは少し無理がある話だろうな。そんな手段、作り上げるのに人類にあとどれだけの時が必要な事か。
 そう、当然のように思う。

 だって、この時にはまだ俺は知らなかったのだから。
 実はそのシステムが大昔から、この地球に存在していた事なんて。







 

 
「ふいー、こんなもんかいな」

 と、今日から住む事になった部屋で、荷物の整理を終えて間抜けな言葉と共に一息つく。
 そう、今日から念願の一人暮らし。地方都市にある割と大きな大学に通う事になってからその大学の近くの部屋を借りる事になった。
 そうして、一段落着いた部屋を見る。まだ雑然とはしているけれど、まず生活するには困らない位の状態にはなった。
 あとは床の埃を掃除機で吸えば大体仕上げだ。


 18歳の春、昔住んでいた名古屋市に帰ってきて、その市一番の大学に受かった。一応国立だ。
 まあ、そう言うわけで地方都市とはいえそれなりの都会で新生活を始めることになった。
 でも、趣味の事もあって都会とは言え、出来るだけ大学の近くて、でも郊外に近いところに部屋を取ったのだけど。
 懐かしい街、とは言え、昔、小学生時代の間住んでいた場所からは少し離れてはいるけど、なんとなく覚えているし、土地勘もある。
 何しろ自転車っ子で、隣りに住んでた雪穂と一緒に市内中を自転車で走り回った物だったから。
 ああ、雪穂って言うのはそういう名前の幼馴染の女の子で、運動神経の良い、活発な子だった。
 引っ越すときも、当時の俺よりも背が高かったから、男女差を意識する事も無く、事実、自転車で走るときも俺の漕ぐスピードに遅れることなく同じ速さで走り回った物だった。

 ああ、中学高校と、なんとなくは覚えていたけどこうもはっきりと思い出すって言うのは、やっぱりこの街に帰ってきたからかな。
 そんな事も思いながら、天体望遠鏡をべランダにセットする。
 そう、俺は空を見るのが趣味だ。場所によっちゃ覗きに間違えられるので、そう言うことも考慮して、大学に近くてもできるだけ暗くて、周りに建物が少ない場所にした。
 それだけの条件でありながら俺が住む事になったこのアパートの二階の部屋(二階建て)は凄く安かった。まあ、結構古いんだけどね。
 まあ、普通の人にとっては都会の方が条件がいいのかな。

 そんなことを思いながら、ジンを用意してレモン果汁やライムジュースなどの割るものを用意する。
 まあ、一応未○年なんだけど、こうやって誰にも迷惑をかけないで、静かにお酒を飲みながら夜空の星を見ている時間が、俺は何よりも好きだ。
 そうして、今日もその癒しの時間をはじめよう足したその瞬間。

「ピンぽーん」

 チャイムが鳴った。畜生、これからの俺のお楽しみ時間を邪魔するとは……。

「ピンぽーん、ピンぽーん、ピンピンピンピンぽーん!」

 ええいっ、うるさいから何度も鳴らすなよ。解かったよ。出るよもう!
 そうして、いったんジンを注いだグラスを置いて玄関のドアを開けた。

 そうして開けた瞬間。

「こんばんはーっ、今日から隣に越してきた秋津ってものですーっ、よろしく!」

 そう、元気な声でお辞儀しているショートカットの女の子が居た。
 そして、こちらにまるで卒業証書を差し出すようなポーズでタオルっぽい粗品を出す。
 ちなみにお辞儀したまま差し出してるので、顔は見えない。

 うん、なんか手順が色々間違っている気がするんだけれど、そんなことよりもこの元気な声と、秋津って苗字は……いやまさか。
 そう思いつつ、粗品を受け取って答える。

「ああ、ご丁寧にありがとうございます。星山って言う物ですけど、こちらこそよろしくお願いします。」

 そう言ったら。

「星山……って」

 そう呟いて彼女は顔を上げて僕を見た。その瞬間。

「「えっ!」」

 声が被った。何しろその顔は大分変ってしまったけど見覚えがあって。

「もしかして……秋津……雪穂?」
「そう言う君は、も、もしかして、邦美……ちゃん?」

 あ、そういえば俺の名前は邦美、って書いてクニミと読むのだ。女の子みたいで昔はいやだったんだけど……ってそんなことはどうでも良い。
 なにしろ 

「う、うわああああぁぁっ!」

 突然彼女が奇声を上げだしたのだから。
 そうして突然い彼女は俺の腕をグワッシと掴んだ。

「う、うぇ?」

 うわ、あまりの事に思わず俺も変な声が出る。が、構わず彼女は続ける。

「うわあ、すっごい、すっごく久しぶりだねクニミちゃんっ! どうしたの! いつ帰ってきたの! ッて言うかここに住むの! 凄い懐かしい、ああ嬉しいよクニミちゃん!」

 ええぃ、相変わらず感情が昂ぶると相手の話を聞かないところは変ってないな。

「ちょ、ちょっと、落ち着こうよ雪穂。そんなに一編に言われても答えられないから。ね?」
「あ、そ、そうだね。ごめんね。私、ビックリしちゃって。あ……」

 そう言うと気づいたように俺の手を放して少し紅くなって俯く。
 その仕草に、ふとドキリとする。

 そう、その妙にしおらしい仕草に、いままで女を意識した事の無かった雪穂に初めて女を感じてしまって俺まで妙に恥ずかしくなる。
 何故かって、その、雪穂は、髪型や身長こそ大きくは変っていないんだけど、平らだった胸も大きくなって、その身体のラインと課雰囲気が妙に女を感じさせて、立派な「可愛い女の子」になっていたのだから。
 まあ、もともと整ってたというか、可愛い顔はしていたけど昔は可愛いだけだし、俺もガキだから邪心も無かった。
 それがいまや色気のある可愛い女の子で、俺も大人。うん、なんつうか、コレ、最強。

 っていうか、なんだ、その。

「アレだよ。立ち話もなんだし、部屋上がる?」

 と、雪穂は紅いままの顔で

「うん!」

 そう嬉しそうに頷いた。


 畜生、可愛いじゃねえか。















「へぇー、1Kであたしの部屋と大体同じだね。あ、隣りだし当たり前か!」

 そう言いながらにこやかに俺の部屋を歩き回る雪穂。なんか凄い違和感。シッカリ者だけど妙に泣き虫で、でも、男友達と同じノリで俺に着いて来てくれた雪穂しか知らないから、なんだかエラい美少女、というか可愛さアップの美人になってしまった幼馴染が部屋の中を歩いているとなんか凄い違和感。

「あーっ、相変わらず星見るの好きなんだ、うわー、懐かしいな、この天体望遠鏡!」

 あ、もうベランダの方を見ている。

「ああ、そう言えば雪穂も良く一緒に星見てたよね。どう、アレからその趣味は続いてない?」
「あ、あははは……。私は君が引っ越しちゃった後は星を見ることはなくなっちゃったな」
「そ、そうか」

 何かわからないけど、それは残念だな。

「あ、でも、君の部屋は隣りなんだし、また見せてよ!」
「ああ、喜んで」
「うん、ありがとう!」

 そう言って、ニコニコしたまま望遠鏡の方に歩いていく雪穂。と……。

「あーーーっ!」

 ん?

「どうかしたか?」
「私たち、まだ18歳だよ。お酒なんか飲んじゃダメだよ」

 ああ、ジンを見つけたのか。

「まあ、硬い事言うなって。確かに高校生や大学生でアル中じゃあ目も当てられないけど嗜む程度だし」
「うー、でもぉ……」
「あっ、そうだ。せっかくの引っ越し祝いだし、隣同士になった幸運を祝って軽くお祝いしようよ。酒もあるし」
「えー、お祝いはいいけど、お酒は……」
「ああ、酒は良いや、最近はアルハラとか煩いしね。取りあえず打ち上げはやらない?」
「うん。あ、部屋こっちで良い? 私土鍋とコンロ持ってるし鍋にしよ!」
「おっ、いいねえ。じゃあ俺は近くのスーパーに材料買いに……」
「あっ、それも大丈夫。私は昨日に越して着てたから、もう準備や買い物やってあるし材料もあるよ!」
「え、でもそんなに甘えちゃって」
「良いの良いの。再開を記念して奢らせてよ。今夜はっ、楽しもうね!」




 そうして、ちゃっちゃと準備が出来て、あっという間の食事タイム。
 ガスコンロの上の土鍋にはだしが取れてて肉に野菜たちはさあ早く俺たちを食えといわんばかりに大量に盛り付けられている。
 って言うか本当に大量にあるな。二人で食いきれるか?

「どうしたの?」
「あ、いやあ、食べきれるかなあって」
「大丈夫大丈夫。君男の子でしょ!」
「あ、あははは、まあいいや。始めようか」
「うんっ!」

 そうして俺はビールで、雪穂はオレンジジュースで……

「それじゃあ、再開を祝って、」
「うんっ、君との再会を祝って……」

「「乾杯!」」

 と言うわけで宴が始まった……のだが。

「ねぇ」
「ん?」
「それ、美味しいの?」
「ああ、ビールか。まあ、鍋には合うよ?」
「少しだけ、すこーしだけ飲んで良い?」
「ああ、いいけどそれじゃあグラス貸して」
「ん、君のでいいよ」
「そ、そうか」

 そういわれて少しドギマギしながらビールの入ったグラスを渡す。
 だが、俺はこの選択を後で死ぬほど後悔する事になるのを、まだ知らなかった。







「あはははははー本当にめでたいよね! 運命を感じるよね。偶然って凄いよね、神様に感謝だよっ!」
「うん、そうだね」

 紅くなった顔で、グラスを片手に笑いながら、料理を平らげて、そして飲み続ける彼女。
 そう、彼女は酔っても明るかった。それは彼女の美点だし、再会は俺も嬉しい、でも。
 その言葉も、焦点の合っていない目でゲラゲラと笑われながら20回以上も言われ続けていればいい加減にうんざりして来る物である。
 まあ、早い話が、彼女は重度の酒乱だったわけだ。
 まあ、絡み酒では無いんだけれど、いや、似たようなものか。

 そして次に彼女は「それにしてもどうして突然引っ越しちゃったのよ。本当にそれから寂しかったんだからねー!」と言う。


「それにしてもどうして突然引っ越しちゃったのよ。本当にそれから寂しかったんだからねー!」
「うん、ごめんね」

 よし、ビンゴゥ!
 まあ、同じやり取りをコレだけ繰り返せば流石に予測も作って物だ。
 はあ、飲ませるんじゃなかった。

 部屋は、惨状への一途を辿っている。
 まず彼女はビールをとっくに飲みきり、残り少なかったジンも全てライムジュースで割って飲みきって、今は残ったウイスキーをロックで飲んでる。
 何処の飲兵衛だよホント。
 そしていい加減酔ってるので注ぐたびに少しづつ溢すは、土鍋に適当に材料を放り込むものだからビチャビチャ撥ねるわ、当然材料が鍋に入らないでコロコロ転がってっても気にしないわ。
 もう大変なものだ。
 はぁ。誰だよ、さっきまで未成年は酒飲んじゃダメとか言ってた奴は。

「あーっ、手が止まってるぞーっ、さあ、食べて」

 こぼしながら料理をよそってくれる。

「飲んで!」

 そう言って俺のグラスにジョニーウオーカーをカポカポと注ぐ。ああ、それ高いのに……。

「あははははっ、愉快だねえ愉快だねぇ! 鍋は美味しいしお酒も初めてだけど美味しいし、向かいには君がいる!」
「ああ、そうですね」

 はぁ、どうしよう。

「あはははははー本当にめでたいよね! 運命を感じるよね。偶然って凄いよね、神様に感謝だよっ!」
「ウン、ソウダネ」
「それにしてもどうして突然引っ越しちゃったのよ。本当にそれから寂しかったんだからねー!」
「ウン、ゴメンネ」

 もう、誰かこの酔っ払いを何とかしてくれ。

「あははははーっ、楽しいなあ楽しいなぁ!」



 だが、恐ろしい事に、この一方的な彼女が話し続けているの状態は、俺がトイレに言っても外の空気を吸いに行っても途切れる事無く続き、ご近所からの苦情も無いまま朝四時ごろに、俺が無理やり飲まされ続けた酒によって潰れるまで続いた。
 薄れ行く意識の中、俺は何かを聞いた気がした。だが、それは彼女に二度と酒を飲ませまいという決意と共にズブズブと沈んでいくのであった。


「あはははははー本当にめでたいよね! 運命を感じるよね。偶然って凄いよね、神様に感謝だよっ! それにしてもどうして突然引っ越しちゃったのよ。本当にそれから寂しかったんだからねー!」

 ああ、別に相槌は要らなかったのね。おやすみなさい。ぐー。


 




 唐突だが、それから一ヶ月が過ぎた。
 あの飲み会の日の次の日。目が覚めたら彼女は部屋の掃除をほぼ完了していた。アレだけ散らかったのが嘘のようで、恐るべき家事スキルだった。
 そして、痛い頭を抱えながら彼女に二日酔いの有無を聞くと、平気だという。恐ろしい奴だ。

 
 まあ、そんなこんなで、隣同士と言うことも在り、良く彼女の作った料理を分けて貰ったり、一緒に食べたりする事もあり昔に戻ったように仲良く生活していた。
 大学が始まってもその生活は続いた。そんな生活は、正直、凄く楽しかった。
 彼女は(アルコールさえ入らなければ)気遣いの出来る明るい良い娘で、昔のままの彼女だったし、大学も、やりたいことの出来る環境で満足だった。
 まあ、そう言うわけでそんなふうに一ヶ月が過ぎたわけですよ。


 いま、大学の学食で、俺は飯を食っていた。無心に、ただ無心に食うべし食うべし。
 今日の昼飯はカレー大盛り。大盛りでも同じ料金のポークカレー。最強。ビバ、ポークカレー。
 それでもって、カツカレーとか食ってる金持ちは最悪、みんな俺の敵。もう寄付すれば良いと思うよ。主に俺に。
 そんな他愛も無いことを思いながら一人飯をする。
 ああ、何て言うか大学内では親しい友人も居なくは無いのだが、俺は飯を食うときは基本的に一人でも全然気にならに人間で、だからと言うわけでもないのだが一人で食う事の方が多かった。
 なんか一人飯嫌がる人多いよね。何でだろう。

 などと言うことを思っていると。

「ねえ、一緒に食べて良い?」

 そんな言葉が隣りから聞こえた。
 ふと視線を上げると、そこには学食のお盆を持った雪穂が居た。ああ、言ってたかな、彼女とは同じ大学だ。
 学部は違うけれど、場所は近くて良くこうして昼ごはんを一緒に取る事も多かった。
 まあ、そんなことは今はどうでも良くて、取りあえず今は……。

「どうぞどうぞ」
「あはっ、ありがとう」


 そう言うと、彼女は俺の向かいの席に着いた。
 彼女の学食は……カツカレーと、キンピラゴボウの小鉢だった。畜生。ぶるじょあじーめ!

「敵だ」
「ん、何か言った?」
「雪穂なんて敵だ」
「え、えーっ!」

 ガーン! という 文字でも浮かびそうな位のショックを受けた表情をする雪穂。あ、ちょっと面白いかも。

「ななな、なんで私が君の敵になるの!」
「いや、たいした事じゃないんだけど……あれ、美味しそうだなーって」

 そうして羨ましそうに彼女のカツカレーを見る。

「あ、そう言うことね。ねえ、一切れ欲しい?」
「ほ、欲しいです!」

 思わず気合が入る。

「解かった。じゃあ一切れあげる」
「えっ、マジ! 俺遠慮しないでもらっちゃうよ!」
「うんうん、いいよ。はい!」

 そう言うと彼女はスプーンで1掬いし、笑顔で俺にカツを一切れくれた。
 すげえ、マジエンジェルだよ彼女!

 そう言う訳で彼女のくれたカツを頬ばる。う、うめえ。これ、プラス百円のチキンカツじゃなくて、プラス百五十円のトンカツの方だよ!
 すげえうめえ

「どう、おいし?」

 笑顔で聞く雪穂。
 ああ、マジプリンセスだよ君は!

「うめぇ、うめぇよぅ!」

 思わず変な言葉になるが気にしない。

「うふふ、そう。良かった。何だか餌付けしてる気分になっちゃった」
「む……」

 やや不名誉。だが。

「甘いな雪穂。餌付けと言うのならばもう一切れくらいくれなきゃダメだよ。そしたらマジ雪穂に忠誠誓って一回くらいなら何でも言う事聞いちゃうかも。あ、金かからないこと限定でだけどね」
「えっ、え、じゃあ……」

 そう言ってもう一切れ差し出す雪穂。なんか顔が紅いけど何でだ?

「ど、どうぞ」
「え、ああ、良いの? 俺バカだから遠慮しないし嫌なら嫌ってはっきり言ってくれて良いんだよ?」
「ううん、いいの。私もちょっと多かったかなーって思ってたし、どうぞ召し上がれ」

 そう言って俺のカレーにカツを落とす雪穂。

「うわっ、マジ。ありがとう雪穂。もう俺雪穂に忠誠誓っちゃう!」

 そうして現金に食う俺。それを笑顔で見てる雪穂。ガキだな、俺。まあ、だからモテないんだろうけど。
 はあ、それにしても我ながら安い忠誠だな、カツ三分の一だから50円の忠誠だし。まあいいや。

「ねえ」

 ん?

「何、雪穂」
「一回言う事聞いてくれるんならさ、今度の日曜日……」



「秋津さん、だよね? ちょっと良いかな」
 


 その声につられて声のしたほうを見上げる。と、そこには長身のイケメンが居た。
 さわやかに決められた茶髪に全身着崩した高そうな服で固めてる。ブランド物って奴か。畜生、コイツイケメンの上に金持ちだよ。マジデビルだ。最終兵器だよ。
 クソッ、イケメンは敵だ。まあ、中学まではカッコいいと言われた事もあったけど、高校は男子校だったせいで碌に色っぽい話も無かった。
 お陰でファッションについては疎いまんまだし、恋愛経験も無い。
 だから恋愛経験豊富な奴は羨ま……もといそんなことしてる暇があったら勉強しろ、勉強しろっ! だからお前は敵だね、今決めた!

「はい、そうですけど……あなたは?」

 そう答え返す雪穂。
 チクショー、雪穂に何の用なんだよ。雪穂に用があるときはまず俺を通せYO! 俺なんか、雪穂の幼馴染でお隣さんなんだぜ!
 まぁ全然関係ないけど。

 だが、奴は俺のことなど目に入っていないように爽やかに笑って雪穂に話しかける。

「俺、氷ノ下 涼って言うもので、秋津さんと同じ授業とって居る者なんだけど」
「はあ」

 氷ノ下涼って、やけに寒そうな名前だな。まあイケメンの名前なんてどうでもいいが。

「あれ、俺の顔覚えてない?」
「覚えて無いです」
「そっかー、それは残念だな」

 つうかコイツ何しに来たんだよ。

「えーっと、私に何か用ですか?」

 あ、やっぱり雪穂も同じこと思ってたか。

「あのさ、この間一回授業休んだでしょ? その時配られたプリントを届けに来たんだけど」

 うわっ、何コイツ。多分コレは口実で、こっからありがとうって言って受け取る雪穂を見て「今度の日曜日空いてる?」とか聞いてデートに誘ったりするんだぜ。
 それで「俺の恋の熱で雪穂ちゃんの雪を溶かしてあげる。ふふふっ、どうした、ここもトロトロじゃないか。下着の中も雪解け水でびしょびしょだな」
 とか言っちゃったりするんだぜ? あーあ、嫌だねぇ、イケメンは。
 っていうか、一回の授業で休む奴なんていくらでも居るだろうし、親切心からってのはコイツがその全員を探してプリント渡してる超暇人&物好きで無い限りありえないことだし、まず間違いなく目的は雪穂のナンパだろうな。
 うん、俺の恋愛経験ゼロの脳髄はそう言う結論を出した。間違いないね! 童貞舐めるなよ。

「はぁ、それって先生に頼まれて、とかですか?」
「いや、俺の独断」
「お互い自己紹介もしていない間柄なのに? 私あなたのこと知らないですし」
「いや、俺の親切心。迷惑だったかな?」

 うわ、こうといわれれば迷惑とは言えないよなぁ。嫌な奴。

「いや、別に迷惑では無いですけど友達に貰ったので要らないです」
「そ、そうか」

 うひょひょー断られてやんの!

「そ、それよりさ、今週の日曜日、空いてるかな」

 うお、マジでナンパしてきやがったよコイツ。まさか俺の恋愛経験値ゼロの勘が当たるとは。どこのスケコマシだよこの男はさ。
 つうか当たるとか俺スゲエ。今日から童貞じゃなくて童帝を名乗るか。王の中の王。キング・オブ・キングス。

「いいえ、少し用事が入る予定がなので」
「そうなんだ。それは残念だな」

 ぷぎゃー振られてやーんの。

「それじゃあさ……俺も昼食うんだけど隣で食っていいかな」

 そう言って、奴は髪を掻き揚げ、爽やかに微笑む。心なしか歯が「キラーン」って光った気がした。
 うっわ、キザ、でも悔しいけど爽やか。っつうかこうまで言われえまだ食い下がる根性は流石だ。うん、俺もモテたかったら見習わないとね。
 まあ、今は別にいいんだけれど。

「はぁ、別に私に許可をとらなくても、どうぞご自由に」
「それじゃあお言葉に甘えて」

 そう言って奴は学食の券売機の方へ歩いていった。クッソ、悔しいけど歩き方も様になってるぜ。

「あ、ごめんね。邦美ちゃんと話してるところだったのにね。なんか変な邪魔が入っちゃって……」
「邪魔って……結構酷いこと言うね雪穂は。俺があの男だったショックで今夜枕を濡らすぜ?」
「あははっ、君のことは邪魔だなんって思わないから安心して。なんか大学入ってからこう言う事が多くてね。何で話しかけてくるのか解からないけど、私は知らない人と話すと気を使って疲れちゃうから……」 

 オイオイ、それマジで言ってるのかよ。口説いてるに決まってるじゃんかさ。鈍いのかな。
 それにしても雪穂って……。

「ねぇ、雪穂ってさ、やっぱり大学で知らない男に良く声かけられたりするの?」
「あ、うん。何でだか解からないんだけどさ、今日みたいのはしょっちゅうだよ。ふぅ。突然大学入ってからこんな事ばっかりっでね、なんでかなぁ……」
「なんでって、そりゃあ……」

 それは雪穂が可愛いからに決まってるじゃないか、と言いそうになってあわてて口をつぐむ。何て言うか、幼馴染にそう言うことを言うのが気恥ずかしかったからだ。
 でも、雪穂は幼馴染の贔屓目無しに見ても綺麗だと思う。
 その外見と、基本的に明るい性格で、確かバスケのサークルに入ってるらしいけどその腕前もなかなかの物。さらに話していると楽しいし、それでもってこの笑顔だ。こんな華の咲いたような綺麗な笑顔を見せられたら声を掛けるなって言うほうが無理な相談だろう。
 事実、俺と一緒に雪穂が飯食ってたのを目撃した同じ学部の奴らがどういう関係だって言うから幼馴染でお隣さんだって言ったらやたらと紹介しろ紹介しろってしつこく言ってくるし、学内での噂話とかでも秋津って言う可愛い新入生が居るらしいって噂になっているのを聞いたこともある。
 まあ、そう言う噂になるくらいに雪穂は可愛いんである。

「ねぇ」
「ん、う、うぇ、なに?」

 いかん、ボーっとしてた。

「君は何でだと思う? 私が大学に入ってから突然いろんな人に声掛けられるようになったのは?」
「そ、それは……」

 それは、雪穂がそれだけ魅力的だからだよ……。
 ってんなこと言えるかーっ!

「それは、秋津さんがそれだけ魅力的だからさ」
「はぁ、そうですか。どうもありがとうございます」
 
 って言ってる。そして適当に答える雪穂。って今言ったの俺じゃ無い!
 ふと見上げるとさっきのキザな奴がトレーを持ったまま雪穂の隣の席に座ろうしていた。
 クッソー、今のコイツが言ったのかよ。さすがモテる奴は違うな。
 まあ、俺も感心しているだけじゃなくて話しかけないと。このままでは会話のイニシアチブを握られてしまう。
 ところでイニシアチブってどういう意味なんだろうか。

「ま、まあさ、大学入るまでは雪穂にそう言ってくれる人が居ないって言うのもよく解からない話なんだけど、それは今までの周りの男共によっぽど見る目が無かったんだな」
「ほ、本当にそう思う?」
「ああ。そりゃあもう」
「えへへっ、ありがとう。でもね、私高校女子高だったんだ」
「へーっ、そうなんだ。でも中学の時とかはどうだった? デートにとか誘われたりしなかった?」
「うー……ん、よく男の子に映画とか色んなところに誘われたりしたけど、あの時私少し沈んでたから断っちゃってたし、それに誘ってくれた人たちだって別にデートとかじゃなくてきっとただの友達として誘ってただけだよ」 

 ……。

「いや、それは無いよ。みんな雪穂のこと狙ってたんだって。うん。鈍感だなぁ雪穂は」

 と、むっとした表情で反論する雪穂。

「だって君の場合は……ふぅ、もう良いや。でも、そう言う君はどうだったの? 九州の方へ越しちゃっていた間」
「あ、俺は……男子校だったからなぁ」
「あ、そうなんだ。あははっ、それって私と一緒だね」
「ああ、そうだな」

 まあ厳密に言えば共学で無いというだけで男子校と女子高だから全然違うのだが。
 例えば俺の想像する女子高。

「お姉さまっ!」
「うふふ、可愛いわね、雪穂は。ほら、いらっしゃい」
「はいっ!」

 ひしっ、ジュルジュルチュパチュパチョポチョッポン。ズゾゾゾゾゾッ。うっふ〜ん。いいわー、イエス、イエッス!

 以下自粛。


 俺の知っている男子校の真実。

 トランクス一丁で授業を受ける親友。学校で唯一の女だった食堂のおばちゃんや中年の女教師にときめく親友。
 その親友との会話。
「なあクニミ」
「なんだ」
「オ○ニーのしすぎでチ○コの○わが○びた。俺の○慰行為のやり方がオーソドックスな物か自信なくなってきた。仮性○茎も治したいのに悪化してるし」
「ふーん。死ねよお前」
「そこで親友のお前に頼みがあるんだがお前はG行為どうやってやってるか、このビデオカメラで録画してきてくれ。参考にするから」
「断る。マジで地獄に堕ちろよお前」
「ほうほう。コレが最近噂のツンデレって奴か」
「はぁ、コレは重症だな。お前早く脳外科行ってこいよ。その膿んだ脳みそ取り替えてもらった方がいいよ」
「まあいいや、取りあえずお前のナニの状態を見せろよ。まさか抜け駆けてズル剥けとか?」
「ばかっ、お前っ、ちょっ、まてえええぇぇっ!」

 以下黒歴史。

 うん、やっぱり全然違う。かたや童貞ビジョンだがバラの香り。かたや汗とワキガとイカのかほり。
 天と地ほどの違いだな。


「……ミちゃん、クニミちゃんってば!」
「ん、あ、ああ。何、雪穂?」
「ふぅ、どうしたの? 突然ボーっとして」
「いや、ちょっと過去の回想を」
「……? まぁ、よく解からないけど、それで君の中学時代はどうだったの?」
「中学時代は……普通だったなぁ」
「普通って、その、恋愛関係とかも?」
「ん、ああ。告白とはポチポチ受けたけどなぁ。普通っていやあ普通だったよ」
「な”っ、告白されたりしたのっ!」
「ん、まあ、ポチポチだけど」
「ふ、ふーん。それでどうしたの。付き合ったりしたの?」
「うんにゃ、結局誰とも付き合わなかった。まあ、新しい環境に適応するのとかで色々と大変だったしな」
「あっ、君もそうなんだ」
「君もって……もしかして雪穂も今まで彼氏居なかったの?」
「うん、当然!」
「当然って……はぁ、何でだよ。雪穂ほどの娘だったら、誰か忘れられないほど好きな奴が居たとかそう言うのが無い限り、男だってより取り見取りだろうし普通付き合うんじゃない?」
「ふーん、そう言うこと言っちゃうんだぁ。さっき君が私の事鈍感って言ったけど、君にだけは言われたくないって言うか君だけは言う資格無いと思うなー」
「なんでさ」
「なんでも、誰のせいで彼氏作れなかったと……ブツブツ」

「あ、あのー……」

「あ、はい。何か用ですか? え、えー……っと、名前」

 すっかり放置された上に自己紹介してたのに名前を覚えられて無かった敵が話しかけてきた。
 っていうかまだ居たのな。イケメン。すっかり忘れてた。

「ああ、俺は氷ノ下だよ」
「あはは、氷ノ下君。名前覚えてなくてごめんね」
「いや、いいさ。それで今週の日曜日がダメなら来週の日曜日はどうかな」
「ごめんねー、私来週の日曜日も用事が入る予定だから」 
「そ、そうなんだ」
「じゃっ、じゃじゃじゃじゃあいつなら空いているかな?」
「ごめんね、私基本的に毎日授業取ってるし、夜はここの邦美ちゃっ……星山君と家が隣で一緒にご飯食べる事が多いので空いて無いんだ」
「あ、そっ、そうなんだ」
「はい、ごめんなさいね」

 大変だ、氷ノ下は瀕死だ。
 
「あ、それでクニミちゃんっ!」 
「ん、あ、ああ。なに?」
「さっきカツあげたらお金がかかる事じゃなければ一つ言う事聞いてくれるって言ったよね?」
「ああ、言ったよ」
「それでね、出来れば一つ聞いて欲しいお願いがあるんだけど……」
「ああ、そんなことね。雪穂にはいつも飯作って貰ったり世話になってるからこんなことが無くても大抵の事なら聞くけど何?」
「えへへ、ありがと。それでね、今週のの日曜日なんだけどね、君が暇だったらで良いんだけど、東北山動物園に行かない?」
「ああ、昔よく行った植物園もあるあそこね。なつかしいなぁ。うん。良いよ」
「やった、誘ってみる物だねっ! 断られたらどうしようかと……」

「ちょぉーっと待ったー!」

「ん?」
「なんだよイケメン」

「俺は氷ノ下だ。あと秋津さんっ!」
「えーっと、何かな。名前……」
「だから氷ノ下!」
「氷ノ下君だね。うん、今度こそ覚えたよ」
「ああ、ありがとう。……じゃ無くて!」

 ナイスノリツッコミ! 
 だがここで反撃、氷ノ下のターンか?

「おかしくね? おかしいよな。さっき俺が誘った時は日曜日は埋まってるって言うのにいきなりソイツ誘い出すし、隣に座っていいって言ったのに俺のことなんか歯牙にもかけずにそこのそいつとばっかり話してるし、おかしいよ絶対!」
「えっ、なんで?」

 いや、そんなこと無いままやっぱり雪穂のターン。

「いや、なんでって……そりゃ」
「だって、私は「用事が入る予定」って言ってたでしょ? それで今は予定通り用事が入ってとっても嬉しいし」
「あ、あぅ?」
「あと、君が私の隣に座りたいって言うのも、ここは大学の公共スペースで座りたいところに座ればいいんだから、私に君を止める権利は無いよ。だから当然のマナーとしてどうぞって言ったんだけど」
「で、でも、普通……」
「そう言えば、えーっと、氷ノ下君はそもそもなんでそこに座ろうと思ったの? 私は今星山君と食事中だったんだけど」

「もうやめてーっ、とっくに氷ノ下のライフはゼロよ!」

 あれ、俺なに叫んでるんだろ?

「? どうしたのクニミちゃん?」
「いや、何でもない。ちょっと世界からの攻撃を受けてマイブームが再燃しただけ」
「……? そうなんだ。よく解からないけどいいや」

 ああ、俺も良く解からないし良いか。

「あっ、クニミちゃん。そんなことよりも、待ち合わせ場所と時間決めようよ! どうする? 植物園の方から回るんなら東北山動物園駅じゃなくて星至ヶ丘(せいじがおか)駅からの方が近いけど」
「あ、あぁ、そうだなぁ……」

 そう、雪穂からの受け答えをしながらも、俺は真っ白に燃え尽きてる氷ノ下の姿を見ながら、雪穂だけは敵に回さないようにしようと誓うのであった。
 そんな、ある平凡な昼休み。






 さて、俺の住んでいるこの街の話でもしようか。
 俺と雪穂の住むアパートは星至ヶ丘駅(せいじがおかえき)の近くにある。
 星至ヶ丘と言う駅には、駅と直結して三つ腰(みつごし)と言うデパートもあり割と都会チックに開けてはいるのだが、駅正面は巨大な山、と言うか地形として隣の街との行き来を途絶えるほどの高い山になっており山の中には寺や樹海と言えるほどの広大な森や崖があったりして自然も多い。
 まさに、自然と都会の融合した、住むのに最高の環境だ。
 そしてその隣の駅が東北山動公園駅。真古屋市最大の動物園にしてついでに遊園地と植物園も併設されている。さらにはスカイハイタワーと言うタワーまである。
 高さは120メートルほどしかないが星至ヶ丘や東北山は真古屋市で最も標高が高いところにあるので、眺めはかなり良い。
 東北山公園というんはそう言うような、色々な物がごったに組み合わさった複合施設だ。
 まあ、複合施設とは言え動物園としてはコアラや白熊やアザラシやペンギンなど見るべきものも多いが、遊園地や植物園は子供だましのちっちゃな物だ。
 だから東北山動物園と呼ぶ人も多い。
 ちなみに大学はさらにその隣の中山駅の近く。俺のアパートがある星至ヶ丘からも十分自転車で通える距離だ。


 さて、今日は雪穂とのデート当日な訳だが、今回は植物園から回ろうと言う事で待ち合わせのメッカである三つ腰デパート前の虎と豹のキメラ像前で待ち合わせする事になった。
 ちなみにこの虎と豹のキメラ像と言う設定のこの石像だがどっから見てもメスライオンと猫のキメラにしか見えないのが難点だ。
 日曜日の朝。他にも待ち合わせしてる人が沢山居る。まあ、そうだよな。ここはそれくらいの待ち合わせに最高の場所だし。
 なにしろ目立つ、駅の改札から一番近い出口だから迷いようがない、雨降っても平気。そんな場所なのだから。
 と、言うわけでキメラ像へと向かう。 

 しかし雪穂もよく解からないよな。部屋が隣同士なのになんでわざわざ駅前で待ち合わせなんだろうな。
 っと、その肝心の雪穂は……まだいないか。ふう、タバコでも吸って待っとくかな。
 などと思っていたら……。

「ごめーん、待ったー?」

 まるで計ったかのようにピッタリのタイミングで雪穂が来た。

「ううん、今来たところ」
「そうなんだ、良かった。それにしてもその受け答え、うんうん、解かってるね君もっ!」
「なにがさ?」
「えへへーっ、なんでもなーい」
「ふーん。まあ、よく解からないけど行こうよ」
「うんっ」

 そうして植物園へ行くために星至ヶ丘名物の坂を登る。俺がこの街に住んでいた頃は何も無かったここだが、今では巨大な「星至ヶ丘テラス」という一大ショッピングスポットとなっており、色々な店を冷やかしながら坂を上る。

 空は抜け渡るような青の快晴。五月特有の爽やかな風が頬をなでまさにデート日和だ。
 ああ、そう言えば星至ヶ丘テラスも一大デートスポットだしな。
 うんうん、ずっとここ六年間男だらけで生きてきたからこういうの実に良いよねぇ。
 
 爽やかな天気!
 心地良い風!
 そして隣を見ればオレンジのワンピースを着た雪穂が、そのショーッとカットの髪を五月の風になびかせて歩いている。
 とても楽しそうな笑顔で今にもスキップを始めそうに歩く雪穂。うん、文句無しに可愛い。

「はーっ、こんな日曜日。青春って感じで、実にいいねぇ雪穂」
「あははっ、そうでしょ。それにこうやって二人で出かけるのもスッゴイ久しぶりだよね! はぁ〜、懐かしい感覚〜」
「ああ。そうだな。あっ、でも何でわざわざ駅前待ち合わせにしたの? 面倒じゃん」
「はぁーっ、ちゃんと受け答えできたと思ったのに……相変わらず鈍いね君は」
「鈍いって……なんでさ」
「ふーっ、それじゃあ鈍いクニミちゃんのためにイチから解説してあげる」
「お、おぅ」
「私はね、君が居なくなくなってからずーっと録に男の子と話すことも無く寂しーく生きてきたの」
「ふ、ふーん。そうなんだ。でも俺だってそう言えば最後に女の子と二人っきりで遊びに行ったのは雪穂と遊んでた時だったけど?」
「あ、そうなんだ。一緒だねっ! って、じゃなくてつまりね、何が言いたいかと言うと、普通中学や高校って言うと恋愛とか謳歌する、いわゆる青春真っ盛りな時代だよね?」
「まっさかり……ま、まあ普通その時代の事は青春時代って言うよね」
「うん、でもね、私の場合は相手が居なかったせいでそう言うことが出来なかったの」
「なんでさ、モテ無かった訳でもなかろうにさ」
「うー、そう言うところが鈍いんだよねー。まあいいか。と・に・か・く、私は、そう言う青春行為が出来なかった訳!」
「ふーん」
「だけど漫画とか読んだり周りのみんなの話とか聞いて憧れてはいたの」
「ほー、やっぱ女の子だねぇ。うんうん。実に良いよその反応」
「もぅ……つまりそう言うわけで今日はね、その空白……あわわわ、じゃなくて暗黒の六年分の青春時代に出来なかったベタな青春っぽい事をこれでもかってやりたいなーって、そう言うわけなの」
「はぁ、それで「まったー」「ううん、今着いたとこ」ってのがやりたかったのね」
「うんうん。そう言うこと」

 うむむ、よく解からんけど、まあいいか。
 と、何かを発見したのか雪穂が突然黙る。

「ん、どうかしたの、雪穂?」
「あっ、ちょっとね、この道って……」

 そこに合ったのは何の変哲も無い坂道。でも……。

「ん、ああ。この道かぁ。懐かしいなぁ。小学校の遠足で来る時にはこのルートでここに来よね。毎年この道を歩いて東北山動物園へ来たモンだったよなぁ」
「そうそう、それであまりにも坂がキツイから水筒のお茶をここで半分以上飲んじゃったりして帰りに悲劇になったりなんかしたよねっ!」
「おう、そうだったな。あっ、そう言えばさ、この坂道の途中に雑木林があって、二人で遊んでる時に通り抜けたら何処に出るんだろうって疑問になって無謀にも自転車持って突っ込んでいった事あったよね?」
「うん、あったよ。懐かしいなぁ。あの時は大変だったよね」
「ああ、途中で道がなくなって自転車持って山を登ってさ」
「そうそう。で、登っていったら途中に変な洋館とか池とかあったりしたよね」
「あったあった、でも大変だったよなぁ、虫だらけで体中刺されてボコボコになっちゃうし、思いのほか広大な林で道には迷うし、雪穂は途中でもう歩けないって言って泣き出しちゃうしさ」
「あーっ、それは君が悪いんだぞ? だって一人でどんどん奥に行っちゃうしだんだん日は暮れてくるし、本当に怖かったんだからね?」
「ああ、そうだったっけ」
「そうだよっ!」
「あはは、悪かったって。でさ、確か最後は真っ直ぐ歩いていたはずなのに何故か入ったところのすぐ隣からズボッて出てきたんだよな」
「そうそう、本当にビックリしたよね。はぁー、懐かしいなぁ」
「そうだな。あっ、そう言えばさ、俺たちの小学校ってさ、遠足は六年連続で東北山公園だったよなぁ。いくら徒歩で来れる距離にあるからって、六年連続はいくらなんでも手抜きすぎだと思うんだけど」
「あははっ、そうだよね。先生たちもきっと面倒くさかったんだろうね。でも、私は楽しかったけどなぁ」
「ん、まあ、そうだな。あの時は何をやっても楽しかった」
「うん、本当。あの時は、本当に、何でも楽しかったよ」

 そう言って懐かしむような笑みを浮かべる雪穂。
 その顔は、勿論笑顔なんだけれど、何故か少し寂しげにも見えた。
 まるで、もう戻せない何かを偲ぶような、そんな寂しげな顔。
 そんな彼女を見てしまったからだろうか。

「あ、あーっ、ほらもう入り口だぞ。中学生までって確か無料だったよな。すっ、凄いよなタダなんて!」

 気づけば無理やりに明るい声を出して雪穂の気を引いていた。何か少し声が裏返った気もするけど。

「あ、うん。そうだよね。それで、えーっと大学生は一般料金だから……」

 でもまあ、俺の声を聞いて普通の笑顔に戻ってくれた雪穂を見たらたまには慣れないハッスルをするのも悪くが無いかななんて思っていた。
 うん。だって雪穂はこの顔が一番可愛いんだし。出来るだけ俺の前ではこの華が咲いたような笑顔を見せ続けて欲しい。
 さて、そう言うわけで今日は一日頑張ってエスコートするとしましょうか。



 さあ、と言うわけでやって来たるは東北山公園。星山邦美の華麗でホスティな一日の始まりである。
 と、言うかよく見たら雪穂は大きな手さげカバンをずっと持っていた。ホスト邦美としてここは持たねばなるまい!

「と、言うわけでさ、雪穂、そのカバン貸して。持つよ」
「えっ、持ってくれるの? ありがとう」
「おう。任せろ」


 と、言うわけでホスティに決めた俺は、デートを始めるのだった。
 まずは植物園の温室。
 
 自由行動中。俺はサボテンを愛でて、雪穂はハエトリグサをつっついてる。
 って、ハエトリグサぁ?
 
「雪穂、それ……」
「ん、ハエトリグサだよ。食虫植物って可愛いよね?」
「そ、そうか?」
「うん、コレは学名はディオネアムスシプラって言うんだけど、ほら見てみて〜、こうすると口閉じちゃって、うわっ、中ってネバネバなんだー」
「こらっ、そんなんに指突っ込んじゃいけません!」
「あははっ、そうだよね、かぶれちゃったらどうしよっか」
「だから早く指出せって」
「うん、あ、もうここいいかなー」
「あ、そうだな。動物園行くか」



 さて、移動して動物園。

「何か見たいものある?」
「んー、特に無いかな。適当に回ろうよっ!」
「そうだな」

 まずは、象。

「うわー、象だ。大きいねー」
「そうだな」
「ねえねえクニミちゃん。象ってあのお尻のあたりがプリチーだよね」
「そうか?」
「そうだよ。ほら、あの紐みたいなシッポとか」

 そう言って指をさす雪穂。
 指した先には巨大な像の尻。ノタノタと歩きながら尻尾をブンブン振っている。
 と、その時。

 ブリブリブリブリブリブリブリブリブブブブーッ!!

 って言う音と共に象の尻から排出される大量のう○こ。
 うん、なんつうか……超スカ○ロ。

「す、凄い量だな雪穂」
「う、うん、なんかバケツ三倍分くらいありそうだよね」
「ああ、まあ体がデカいからな」
「うん……」

 そうしてなんとなく流れる気まずい空気。
 って言ううかくせぇよオイ!

「ほか行こっか雪穂」
「そうだね」


 そうしてやってきたのは目玉のコアラ館。
 流石に目玉だけ会って人も多く、薄暗いガラス張りにされたコアラの部屋の前には人の山が出来ている。

「うわーっ、寝てるよ。クニミちゃん。全く動かないね」
「そうだな、まあコアラなんてそんなもんだろ」
「うん、でも……。うわぁ〜やっぱり可愛いな」
「そうだな」

 よかった。さっきから食虫植物とか象の尻とか変な物ばっか可愛いって言ってるけど雪穂にも普通の美的感覚はあったんだ。一安心。

「コアラってさ、あの手のあたりとか可愛いよねっ!」
「そうだな、でも知ってるか雪穂?」
「何が?」
「雪穂の握力って何キロ?」
「えーっと、確か高校の時計った記録は32キロだったよ?」
「うん、そんなモンだよな。ちなみに俺は50キロ」
「うわっ、力もちなんだね、クニミちゃん」
「そうでも無いさ。だってさ、あのコアラの握力ってさ1トンらしいよ」
「い、いいい1トンっ!?」
「ああ、凄いよな、ちなみにあの常に木にぶら下がってるチンパンジーは200キロ、ゴリラでも500キロ位らしいのにあの小さな身体の何処にそんな力が……」
「一トン……そんな力で……」
「ああ、そんな力で腕でも握られようものならすぐに潰れちゃうだろうな」
「う、ううぅ……」

 そう言ったきり黙ってしまう雪穂。心なしか青ざめて腕を抱えるようにしている。
 そんな雪穂を見て、ふといたずら心と言うか、嗜虐心がわいてしまった。 

 そして気づけばその細い腕にそーッと手を伸ばして、そして耳元で

「わっ!」

 と言いながら雪穂の手首をガバッっと握っていた。

「きゃあああああぁっ!!」

 思いのほか大声を上げる雪穂。

「って、何するのよクニミちゃんっ!」
「いやー、悪い。ついつい。そんなびっくりと思わなくって」
「するに決まってるじゃないっ、あんな話された後にそんなことされたらビックリするに決まってるよ!」
「ま、まあそれもそうだな。悪かったって」
「もーっ、ってば、あれ?」

 そうして気づいたかのように周りを見る雪穂。ん、そう言えばやけに静かだな。
 そうして俺も周りを見てみると周りの人がほぼ全員俺たちのほうを見ている。
 ははーん、そう言うことか。

「そう言えばここはコアラ館だぞ。静かにしなきゃダメだろ雪穂?」
「く、クニミちゃんがそれを言うっ!?……って、はっ!」
「ほら、また大声出して。謝って皆に」
「う、うううう、すみませんでしたぁ」
「はいはい」

「「「「ってか今の原因お前だろう!」」」」
 
 以上、他の客からのツッコミなのであった。


__________________



 さて、そう言うわけでハブられて俺たちはコアラ館から逃げ出したのであった。

「うううぅ、恥ずかしかったよぅ」
「ははっ、まあ気にするなって」
「って、今のは君のせいなんだぞぉ?」
「ははは、悪かったよ。お詫びにさ、一緒にボート乗らない?」

 あ、そうである、説明してなかったがこの東北山動物園の中には巨大な池があってボートにも乗れるんである。

「ぼーと……」
「おう、スワンボートでも普通のでもいいからさ。どう?」
「私は……乗りたくないな」
「え、なんで? 俺奢るよ」
「うん、ありがとう。でも、私は、乗りたくないな……」
「どうして、また」

 珍しい、雪穂がこんなに拒絶するなんて。

「ちょっと、ね。君は忘れちゃった? このボートにあるジンクス」
「う、ん、ちょっと、何のこと言ってるか解からないな。なんだよ、そのジンクスって」
「そ、それは……うん。ほ、ほら、また、今度にしてさ、あそこのライオンでも見にいこ!」
「ん、そうか」

 なんか露骨に話を逸らしてるけど、まあ、良いか。聞きたくない事を無理に聞くことも無いか。

「そうだな。ライオン見に行こう雪穂」
「うんっ!」



______________________




 と、いうわけでライオンの檻の所へ来たわけだが……。
 鬣の立派な雄ライオンは昼寝中らしく、メスライオンしか居ない。
 だ、だがっ! それを持って有り余るほどに、ライオンって言うのは……。

「か、かわいい……」
「えっ、やだなぁもう、突然そんなこと……照れちゃうよ、クニミちゃん……」

 雪穂が何か言っているが聞こえない。それほどに……

「ライオンって、可愛いよなぁ」
「あ、ああっ、ああああっ。ライオンか、そうだよね、ライオン、うん、可愛いよね、ふぅ」
「ん、雪穂、どうかしたか?」
「なんでもないよーだ……鈍感」
「ん、なんか言った?」
「なんでもないって。それより随分ライオン好きなんだね」
「ん? ああ。まあ、猫科は基本的に好きだな」
「そうなんだ。ふー……ん、猫っぽいもので誘えば或いは……」
「何か言ったか雪穂?」
「あ、あはは、なんでもないよ、ちょっと独り言。それよりさ、ライオン達、随分暇そうだね」
「ああ、まあこんな檻の中でやることといえば飯と寝てるだけ、そりゃあ暇だろうな」
「ふーん、そう考えると可哀想だよね。私だったらきっと耐えられない」
「そうだな、うん……」

 そうだよな、生まれた時からここに居たのか捕まえてこられたのかは知らないけれど。
 でも、ずっと、檻の中、やることも無く生きていく。
 それは何て、寂しくて、孤独な生涯。

 そこに在ったのは同情だったのだろうか、それとも純粋な悲しみだったのだろうか。
 気がつけば……。

「〜〜〜〜〜♪」

 昔勉強したドイツ語の歌を歌っていた。
 その行動に、特に意志も無ければ意味も何も無い。
 ただ、唄いたいから、声が出ていた。
 

__________________




「ぐ、ガグオオオオオオォッ!!」

 どれだけの時が立ったのだろうか。
 ふと、ライオンの声で現実に戻される。
 ハッ、俺は何を!

「いい曲だね。クニミちゃん。何の曲?」
「ん? ああ、古いドイツ民謡でさ、わが青春は過ぎにけりって言う古いドイツ民謡さ」
「わが青春は過ぎにけり…………か」
「ああ、俺の天体観測以外の趣味でクラシック音楽の鑑賞ってのがあるんだけど、バロック以前だから知る人も殆ど居ないと思うがヤン・ピーテルスゾーン・スウェーリンクって言うバッハよりも更に大昔の作曲家がこの曲を主題に変奏曲を書いてるんだぜ?」
「う、そうなんだ。全く何の事か解からないんだけどさ、何で君は今ここでその歌を歌いだしたの?」
「なんでだろうなぁ、きっと」
「きっと?」
「俺にも良く解からないんだけどきっとさ、あまりにライオンが暇そうだったから、少しでも暇つぶしになればってとか、そう言った自己満足だと思うんだよな」
「そ、そうなんだ。でも……」
「でも?」
「ライオンは楽しかったみたいだよ?」
「へ?」

 言われてみると、眠いって居たメスライオンが俺の近くまで来て檻の向こうからこちらを見ている。

「う、ウグルォ? グルグル……」

「な、何か唸ってるね」
「ああ」

「グルグルゴロゴロ……ウグルィォル?」

「なんか喋ってるよね?」
「ああ、コレは拙い」
「へ?」
「なんだかよく解からんが、俺のオスとしての本能が解読するにどうやら……」
「どうやら?」
「俺はコイツに求愛されているようだ」
「きゅ、求愛ー!?」
「ああ」
「そんな、ダメだよっ!」

 そう言って俺の腕にしがみつく雪穂。

「ガオオオオオオオォオォォォッッ!!!」
「うひゃあっ!」

 突然雪穂に向かってほえるライオン。

「ううう、拙いな、ここは別の所行くか」
「そうだねっ、行こう」
「ガグルオオオオオォォッッ!!」

 そうして俺たちは逃げ出した!

 のだった。



______________



「うーん、ライオンも可愛いけどさ、私は白熊の方が好きだなー」
「そうかな。まあ確かに迫力あるよね。結構調べたし」

 そう。と、言うわけで、今は白熊館にいるのだ。
 
 俺はそう言って白熊を見ながらふと思い返す。
 白熊、所謂ホッキョクグマには様々な神話があるのである。俺はそれに引かれて調べていた時期があるのだ。

「うわー、可愛いよね、ホッキョクグマって」
「うん。でもホッキョクグマは狂暴なんだぜ。もしも北極やアラスカで出会ったりしたら人間なんかはすぐに殺されてしまうからな。俺がファンだった写真家もアラスカでホッキョクグマに襲われて死んだし」
「そ、そんなに狂暴なんだ。怖いんだね」
「ああ、まあな。でもさ、ホッキョクグマはそれでいいんだよ。むしろ恐ろしい存在じゃなくちゃならないんだ」
「ん、それってどゆこと?」
「まんまの意味さ。その人、俺がファンだった写真家の人さ、アラスカの伝承とかも調べてる人だったんだけど、その人の本に書いてある話にこんなんがあったんだ。曰く、神とはワタリガラスのカタチでこの世界に舞い降りたらしい」
「ワタリガラス?」
「ああ。変わってるだろ。でもさ、それがアラスカの伝承なんだ。その伝承によると人はエンドウのさやから生まれて、ワタリガラスと話すんだ。そして最初に話してから四日後にまたワタリガラスがやってくるとサーモンベリーとヒースベリーの実をを二つずつ人間に渡す。そして次は水辺へ降りていって粘土で二匹のシロイワヤギを作るんだ。ワタリガラスがその上で四回翼を羽ばたかせるとシロイワヤギは命を得て走っていく。カリブー、ジネズミ、カワヒメマス、ああ、これは皆アラスカの人たちにとっては重要な生き物なんだけどね、とにかくそうして地上は徐々に生き物たちで満ちていく。そしてワタリガラスがまた口を開くんだ。「お前は1人で寂しいだろう」と。そうして同じように翼を羽ばたかせると一人の美しい女が現れるんだ」
「ふーん。なんだか旧約聖書の天地創造にも少しだけ似ているよね。でもさ、何処にホッキョクグマが出てくるの?」
「ん? ああ。熊は最後に出てくるんだ。人間が恐れを持つ何かを作らねば、この地上にこしらえた全ての物をいつか滅ぼしてしまうに違いないと。 そしてワタリガラスは一頭の熊を形作り、そこに命を吹き込むんだってさ。今でさえ銃があれば、一対一でも熊に勝つ事はできるんだろうけど、昔、銃なんてなかった時代のアラスカインディアンにとっては熊はきっと逢えば死を意味するような、恐怖の象徴でもあって、またそれだけに神聖な物だったんだろうさ。別に宗教とかは好きじゃないんだけれど、この話には何か奥深い物を感じてしまうね」
「うん。そうだね。はぁ、そうやって見ると、こうやって檻に飼われているホッキョクグマを見るのは何か複雑だよね」
「んー、まあ、そうなんだけど、さ。ここはそう言う場所さ。アラスカ神話なんて言い出した俺が悪いんだけどさ、あんまりそう言うことを気にするのは無粋かもよ?」
「ううん、そう言うことも考えて見たほうが、きっと色々考えられるよ」
「そう……かな」
「そうだよ!」

__________________


 そうして、それからも色々な動物を見たり、「ヒト」とかかれた檻に俺が入って、それを外から雪穂が携帯で写真を撮ったりとなかなか楽しく時間は過ぎていったのだった。
 だが、そんなこんなでもう三時。朝から何も食べずにぶっ通しで遊んでいて流石に腹が減ったってモンだ。
 と、言うわけで……。

「ねー雪穂、おなか減ったよ。そろそろ飯食わない?」
「あ、良いね。私ももうおなかペコペコ」
「なら言ってくれれば良いのに。売店とかになるけど奢るよ?」
「うー……」

 突然ジト目になって唸る雪穂。

「どうしたの突然?」
「私が朝君に渡したカバン」
「ああ、コレね」
「中身お弁当なんだけど」
「へっ、弁当?」

 言われてみれば大きさもちょうどそれくらい……。
 ジジジジジッとジッパーを引いて空けてみると……確かに布で包まれた弁当箱のようなものが鎮座しているわけで……。

「うわっ、本当に弁当が入ってる!」
「当たり前でしょ! って言うか、今までなんだと思って持ってたのよ」
「いや、何か私物が入ってるのかなーって。わざわざ作っておいてくれたんだ、ありがとうな雪穂。でさ、何処で食べる? どっかテキトーなベンチででも」
「あっ、それなら良い場所があるの。ねぇ、ちょっと着いてきてくれる?」
「ああ。いいけど」

 そう言われて歩いていく雪穂の後についていくのであった。
 雪穂はそのまま動物園を抜けて植物園の方へ行く。そして植物園の温室近くのパンジーとかが植わっている花壇の近くへやってきた。

「ねぇ、クニミちゃん、この花壇と植え込みの隙間、見覚えない?」
「いや、だってただの花壇だろここ?」
「そう」

 そう言うと雪穂は少し悲しそうな顔をして言った。

「あのね、この隙間、通れるんだよ?」

 そう言って先へ進んでいってしまう雪穂。

「ってオイオイ、ちょっと待てよ。そんな隙間歩いたってなんにも在るわけ……って、アレ?」

 雪穂を追いかけて歩く事数歩。花壇と植え込みの隙間を抜けると、そこは道になっている。
 あれ、確かこの風景どこかで……。

「ね、道になってるでしょ? 早く登ろう」
「あ、ああ」

 そう言われて、雪穂の後についてその登りの林道のような道を歩いていく。
 そう、雪穂のさっきの言葉、見覚えが無いか。そう言われれば確かにこの道は、昔、どこかで……。

「ほら、着いたよ」
「ああ、そうだったな。ここで、俺たちは毎年……」
「あっ、思い出してくれたんだ」
「うん、思い出した」

 そこは、ただの広場だった。
 そう、本当に、ただの広場としか形容の使用が無い場所。

 特別な物なんて何も無い。手入れされた森の中、そこだけ木も何もなく広場になっている。
 中心には、四角い木でできた無骨なテーブルと。そのテーブルを囲むようにある木のベンチだけ。
 本当に、それだけの場所。

 ただ、そこは広場になっているお陰で、森の中と違い、木の隙間から柔らかな光が入ってくる。
 そして、おそらくこのあたりのでも最も高い場所にあるからだろうか。殆ど外の音が入ってこないとても静かな場所。
 聞こえるのは、風の音と鳥の声と木々と葉の囀りだけ。
 勿論人なんか殆ど来る事は無い。俺たちの秘密の場所。
 そして、きっと食事を楽しむのにも最高の場所。

「遠足の時ってさ、ここで毎年俺たちは弁当食ってたよな」
「うん、そうだよね。ここを見つけたのは小学校の二年生の頃。君が見つけたんだよ?」
「そうだったっけか。よく覚えてるな」
「うん、君とのことは、何でも覚えてるよ」
「そ、そうか」

 嬉しいのだが、面と向かって言われると照れるぜ。
 
「君ってさ、いつもフラフラしててさ、あっちこっち色んな所を探検しては、私に素敵な場所を教えてくれたよね?」
「そ、そうだったけか。まあ散歩や散策は好きだったけどフラフラしてって言うのは……」
「ううん、絶対君はいつもフラフラしてたよ。そしてね、そのたびに素敵な場所を見つけては、私に教えて、そして私もそこに連れてきてくれるの。ここもそんな場所の中の一つ」
「そ、そうなんだ。まあ素敵って言って喜んで貰えたんなら何よりだよ」
「うん、私は嬉しかった。素敵な場所に行って、君と感動を共有できるのが、何より嬉しかったの。でもね……」
「でも?」
「でも、そんな君が不安でもあったの。ふらふらしてるからそのまま居なくなっちゃいそうで、そして中学に上がる時にそれが……」
「雪穂……」

 それを言われると何もいえない。
 だって、俺は引越しの事を雪穂に黙っていたのだから。

 俺だって雪穂と離れ離れになりたくてなったわけではない。
 彼女と居ると楽しかった。ずっと一緒に居たいとまで思った。
 でも、それがなんと言う感情なのか俺にはわからなかったんだ。
 そして、突然の親の転勤のせいで引越し。

 なんて言えば良いかわからなかった。もう雪穂の笑顔が見れなくなるのが怖かった。でも、当時の俺は自分の気持ちさえ解かっていなかった。
 だから、何も考えられずに、ただ逃げ出した。何も言わずに。
 俺は、最低だ。

「あっ、ゴメンね、何か変な空気にしちゃって。今日は朝早く起きて頑張って作ったんだから、味わって食べてね!」
「ん、ああ、そうだな。でもいつも雪穂の料理は美味しいし、期待してるよ」

 はぁ、どうも、気を使わせちゃったみたいだな。
 本当に人間出来てるって言うか、良い娘だよなぁ。雪穂って。何で俺なんかに付き合ってくれてるんだろ。 


 

  1. 2009/10/25(日) 03:32:15|
  2. 実験小説
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kitayuki siko

Author:kitayuki siko
趣味で小説を書くの。

前書いてた日記帳がリアルバレして赤裸々に書けなくなってしまったので誰もいないこっちに作りました。
赤裸々にいろいろ書きます。
あと、小説を読んでくださる方への諸連絡に使えればと思います。

あと隠れゲーム好き。
でもRPGは苦手で最後まで行った事がないのが悩み。


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